年金額の計算

積立式において、保険料は将来にわたって一定の水準を保つように算出される。これを「平準保険料」と、よんでいる。しかし平準保険料には、将来の給付費が経済状勢の変化によって影響をうけること等はふくまれていない。したがって、平準保険料が将来にわたって変わらないことはありえない。給付水準の引き上げ、物価スライドの実施等により給付費は増加し、平準保険料の引き上げを行なわなければならない。

厚生年金、国民年金では、五年ごとの財政再計算の際に、その時点での給付水準を将来とも維持していくのに必要な「平準保険料率」を計算するが、平準保険料率は次第に上昇する。しかし実際には、国民年金、厚生年金とも保険料率は平準保険料率より低く設定されている。将来の給付費を見込んだ平準保険料率は高くなり、年金加入者にとって負担は大きいので、保険料率を平準保険料率より低く設定して、段階的に引き上げる方法をとっている。この方式は完全な積立式ではなく、賦課式に近づく。つまり積立式と賦課式の中間であり。「修正積立式」とよんでいる。日本の年金の財政方式は、この修正積立式で運営されている。この方式では年金給付費用の一部は現役世代に負担してもらうわけで、部分的賦課式ということができる。

年金はどのようにして計算するのか。自分の年金額はどんな計算で出されるのか。これはだれでも知りたいと願うことである。制度によって計算法がすこしずつ違うので、くわしくは読んでいただくことにして、ここでは原則的なものを述べておきたい。年金の計算法は、大きくわけて「定額方式」と「所得比例方式」があり、両者を組み合わせた制度もある。ドイツ、フランスなどの大陸型の制度は、所得に比例する制度であり、スウェーデン、カナダなどは一階の基本部分は定額、二階部分が所得比例である。日本の厚生年金も、「定額部分」と「報酬比例部分」の組み合わせである。

厚生年金の定額部分は、所得とは関係なく、定額単価に加入月数、スライド率をかけて算出する。したがって、加入月数が長ければ、低所得の人でもこの部分の年金額は高くなる。低所得だった人を配慮した方法であり、所得の再配分という社会保障の目的にかなっている。しかし、八五年改正によって、右の定額部分の効果は次第に変わることになる。改正では、定額部分の定額単価を一歳刻みで切り下げる経過措置がとられた。高年齢の人は比較的高い定額単価だが、一九四六年四月二日以後に生まれた人の単価は二八八円二九八九年)に一定した。つまりこの年齢以降の人は、この定額単価をもとに計算する定額の老齢基礎年金をもらうことになる。こうして定額部分は、頭打ちとなってしまった。報酬比例部分では、収入の高かった人に、より高い年金が保障されるわけで、所得の再配分の効果という点では十分でない。