偏見をもちやすい性格
偏見は社会的に学習された態度であり、社会全体として、ある対象に対していだくまで発展する場合があるが、基本的には個人のもつ態度であり、それゆえ、個々の人々のもつ偏見の様相や程度には多くの差異がみられる。
しかも、偏見は、正常な態度のあらわれというよりは、異常であり、病的にゆがめられた態度であるために、どのような人が偏見をいだきやすいかということも一つの問題である。
偏見をいだきやすいかどうかは個人のもつパーソナリティーに関連があるだろうということが1940年頃からしだいに注目されはじめてきている。
多くの研究の中でも、アドルノ、フレンケル、ブルンスウィク、レビンソン、サンフォードらの行なった研究がもっとも有名なものである。それをここで紹介してみよう。
人種的偏見をいだきやすいのは、権威主義的パーソナリティーの持ち主であり、ユダヤ人に対する偏見は、次のような、人格構造と非常に関連があるというものである。
1.因襲尊重主義・・・伝統的、中産階級的価値への執着
2.権威主義的服従性・・・集団内の理想化された権威に対する服従的、無批判的態度
3.権威主義的攻撃性・・・伝統的な価値を犯す人を看視し、非難し、かつ、これに反発し、罰しようとする傾向
4.内省的傾向の排除・・主観的、想像的で柔らかい心に対する反発
5.迷信とステレオ・タイプ的考え方・・・個人の運命に神秘的な決定要因があるという信念をいだき、固定概念で物事を考えようとする傾向
6.権力と不屈さ・・・支配する人と服従する人、強い人と弱い人、指導者と従属者の関係に関心をもち、権力のある人へ同一視し、習慣化された自我を極度に強調する態度、強さに対する誇張的態度
7.破壊性と人間蔑視・・・人間性への敵意や侮蔑
8.投射性・・・野蛮で危険なものが世の中をうろうろしているという信念、無意識的、情緒的衝動の外界への投射
9.性・・・性的な行為に対する過度な関心
これらの諸特性が結びつけられて、権威的なものを受け入れやすい態度構造が形成されるわけであるが、これらの諸特性は、特に、家庭における、厳しいしつけによって基礎づけられることが多いといわれている。
しかも、厳しいしつけの背後には、親と子の間に、厳しい支配と服従の関係がみられることが多く、しつけそのものからだけでなく、そうした親子関係からも、子どもは敏感に権威主義的傾向を学びとってゆくのである。