衣食住に関する衛生状態の悪化

人口の過密自体が伝染病流行の要因であるとともに、そのことが衣食住に関する衛生状態の悪化を伴うことも多かったと考えられるからである。これは現在にも、原理的にはそのまま当てはまることである。病原体は次々に新しいヒトに伝染していかなければその種が絶えてしまうので、患者の近くに、病原体が新たに感染できるヒトが存在しなければならないということになる。最も密集して生活できる大型動物のひとつではないかと思われる。また動物の中で、同一種としてその総数が最も多いもののほうに属するのではないだろうか。こういうことも、ヒトにおける伝染病や感染症を考える場合には必要な事柄になる。

大航海時代といわれる時代になって、コロンブスの新大陸への航海と結び付けられる梅毒の流行などもあった。梅毒はSexually Transmitted Diseaseあるいは性病とよばれるもののひとつである。人間以外の動物では生殖活動が季節によって定まっているので、宿主の生殖活動を利用して感染環を成り立たせるのは伝染病の病原体にとって難しい。この意味で、性病は人間に特有の伝染病と言える。