医療裁判で患者側が有利なケースとは

さらに、医師の免許を剥奪するなどは、もっと難しいでしょう。医師をやめさせたら、その医師は生活できなくなりますから、賠償金を払わせるよりも厳しい制裁になります。従って、医師免許の剥奪というのは、極めて限定的な処置です。

となると、医療ミスを何回繰り返しても平然と医療行為を続けられるようになっている現実というのは、日本の「法体系」からいって当然のことなのです(ちなみに、こんな序列、体系が、「わが国の法体系」として尊重されているものの実態です)。

「最近は、多少なりとも患者側か勝つケースも増えていますよ」などという気休めは聞きますが、原則的パターンは変わらない構造的な問題です。だから、あまり安心できません。むしろ基本的には、事実は闇に葬られるのが当たり前」ということでしょう。

そういう日本の医療に対する裁判の現実に、みなさん、背筋が寒くはなりませんか? 構造的にはどうしようもなく、賢明な裁判官のお裁きを待つしかないということなのでしょうか?しかも、「損害賠償してもらって何になるのか?」という問題提起さえあります。

確かに、賠償金をもらったところで、死んだ被害者は帰ってきません。被害者の遺族も、テレビのブラウン管で「お金など一銭もほしくはありません。あの人を返してほしいだけなのです」と叫びます。中には「あの人を返してください」と言う人もいて涙を誘います。

ただ、死んだ被害者は絶対に返してもらえないのに、「一銭もほしくない」という願いだけは、簡単に聞いてもらえます。「あの人たちはお金目的ではないのだから、あまり金額は大きくなくてもいい」ということになります。すると、日本は何事もお金で換算する資本主義社会ですから、「あまり大きな問題ではない」というふうにスリ替えて理解されてしまいさえします。