「外圧」好きな日本のマスコミ

日本の「恒久」減税をめぐる政策論争のなかで、「恒久」減税がアメリカあるいは国際社会からの要求であるといわれることがしばしばあるが、これは正確ではない。R・ルーピン米国財務長官あるいは、L・サマーズ副長官は「実質的かつ継続的(Sub-stantial Sustained)な財政刺激」を求めているが、恒久減税という言葉を一度も使ったことはない。

日本人の記者からしばしば”恒久減税”を求めているのかという質問をされているが、これに対してはいつも、「財政政策の具体的内容は日本政府がきめるものであって、我々がとやかくいうべきものではない」と答えているのである。「外圧」が全くないわけではないが、「外圧」好きの日本のマスコミが勝手に「外圧」の内容をつくりあげてしまっているということは十分留意されなくてはならないだろう。

他方、多くの数のエクスパート達にとっては「恒久減税」は「恒久的」な税制改革を意味している。たしかに、理論的には「恒久的」な減税などありえないのだが「恒久的」税制改革なら十分ありうるのである。

九八年七月三日に橋本前総理が、「恒久的」税制改革に言及したのは、まさにこの意味で正確な発言だったのである。「恒久的」税制改革は一時的減税あるいは一時的増税をもたらすことはあるが、ポイントは、減税がどうなるかということではなく、税制度がどう変わるかということなのである。

税制改革論議を「恒久的」減税とからめることは、ある意味では、論点のすり替えであることはまちがいない。そして論点をすり替えたいと思っている人々が存在することもまちがいない。