結論に至るプロセスが重要

なぜホテルで朝食のルームサービスを頼むように、食料品を配達してもらう時間を指定できないのだろうか。そして考えてもらいたい。この電子スーパーマーケットで、今週のお子様メニューやお祝いメニュー、ダイエット用のメニューなどのおすすめレシピをつくったらどうだろうか。それをつくろうと思った人が材料を簡単に注文できるように、必要な材料をリストーアップしておいたらどうだろうか。おすすめワインーリストも考えられる。スーパーマーケットの経営者が考えるコンビニエンスとは、二四時間営業とレジでの待ち時間の短縮なのだが、それは我々が考えるコンビニエンスではない。

ここで挙げた例はさまざまなビジネスからの類推に基づいている。便利さの追求という点では、これほど多くのサしビス業がスーパーマーケットのはるか先をいっているのだから、未来のスーパーマーケットを想像するのはそれほど難しくない。もちろんそのためには、そもそもスーパーマーケットとは何なのかを考え直す必要はある。宅配のスーパーマーケットを始めるためには、今とは違った設備、情報技術のインフラ、違ったスキルを持った従業員、違った立地などが必要になるだろう。宅配によって今のようなスーパーマーケットがなくなることはないだろうが、革新的な小売業者が出てきて宅配を始めたら、この業者は大成功するに違いない。

ゼネラルーマジックではインテリジェントな情報エージェントを装備した携帯情報端末をつくろうとしているが、彼らは目標を設定する時に電話という比喩を使った。ゼネラルーマジックの創始者の一人であるビルーアトキンソンは次のように語っている。「今日から電話の使用が禁止されたとしよう。この瞬間から一本も電話をかけてはいけない。これは大変だとみんなが思うに違いない。なぜなら、電話はおそらく他のどんな道具よりも、そうパソコンよりも、あなたにとって欠かせないものだから。そしてこれがぼくらの考える成功の尺度なのだ。一〇年後に、今から携帯情報端末の使用を禁止すると言ったらどうなるだろうか。ぼくらの目標は、その時あなたが『これなしの生活なんて考えられない』と言うことなんだ」。

まったく違う意味で、保険業界の経営者はこれから直面する問題を理解するために、金融サービスの他の分野に目を配る必要がある。彼らは他の金融サービス会社がどのように消費者主義、規制緩和、金融機関離れ、商品の均一化などに対処し、それを踏み台としていったかを学ぶべきである。他の産業から学ぶチャンスに敏感な経営者や、利用できる類似を探すことを怠らない経営者が、未来のための競争で他社に先行する。

未来図を描く過程で一番難しいのは、それを表現する言葉を見つけることだ。具体的で一般的なものを使った比喩を使うと、抽象的で身近でないものもわかりやすく表現できる。知識ナビゲーターやデジタル秘書というのも比喩で、ナビゲーターとか秘書という身近なものを用いて、まだ世の中に浸透していない製品コンセプトを表している。確かに類推や比喩で理解する能力には個人差もあるが、たいていの人はいくつか例を与えられれば、現在と未来のギャップに橋差架けるようなイメージを思い浮かべることができる。