直接金融への移行を

構造改革の具体的な課題としてつぎにあげられるのは、金融構造の改革だ。これまで金融危機対策として行なわれてきたことの中心は、不良債権の処理である。しかし、長期的な観点からみてより重要なのは、新しい産業構造を支える金融の仕組みを構築することである。

これまでの日本では、間接金融方式、が中心であった。したがって、銀行という組織のなかで資金配分が決定されてきた。銀行融資は保守的なものにならざるをえなトため、リスクが高く成功が保証されなト分野には、資金が流れにくい。また、貸付という形で資金が供給されると事業失敗のリスクは事業者自身が負わなけ牡ばならないため、人付小新しい分野に流れにくいという問題も生じる。

以上のような状況は、新しいリディンダーインダストリーの誕生にとって、大きな障害となっている。日本でベンチャー企業が生まれにくい人きな原因の一つが、ここにある。すでに述べたように、間接金融中心の金融構造は、四〇年体制の特徴である。間接金融システムは、規模が大きくリスクが大きくない経済活動に適している。したがって、高度成長期の重厚長大産業への資金供給には、適していた。

しかし、新しい産業は、銀行貸出が対応できない分野であり、したがって従来の日本の金融構造がサポートできないものである。日本経済の根本問題は、間接金融、が依然として支配的であるために、新しい分野に資金が回らないことにある。日本経済の長期的発展のためには、間接金融が中心的役割を果たす従来のシステムを大きく変える心要がある。

リスクが高い分野に資金を供給するには、直接金融に頼らざるをえない。米国では、店頭市場ベンチャー企業の資金供給源として、重要な役割を果たしている。日本にも店頭市場があるが、制約が多くて機能していない。従来の間接金融の仕組みを、直接金融に移してゆくことが心要である。